英文読解でこずるパターンとは

日本語を母語とする私たちが、英文読解・長文読解でてこずるパターンというのは、ある程度、その傾向が大体決まっているのではないでしょうか。日本語でも同じことが言えますが、1文中の修飾語表現(句や節の形で)が長くなっていたりすると、文は複雑になって、読解するのに必要な文法事項も多くなります。例えば、以下の文では関係詞(関係詞には関係代名詞と関係副詞の2つがあり、ここでは関係代名詞)が使われていますが、どうでしょうか。
Vivian is coming to my house tonight with her dog that helped the police catch the criminal and appeared in the news on TV 3 days ago.

 

この文は、学校で習う英語の基本5文型で言えば、第1文型に当て嵌まります。第1文型は英語を習い始めてすぐの段階で学ぶものです。学校英語教育の中では、英文の基本構成要素は主語・述語・補語・目的語で、その他の要素として修飾語が教えられているようです。上の英文は「今夜ヴィヴィアンが、3日前に警察の犯人逮捕を助けてテレビのニュースに出てた彼女の犬と一緒に私の家に来るの。」と訳すことが出来ます。文型だけで考えれば、Vivian will come to my house tonight・・と明らかに Vivian が主語ですが、内容の重心の観点から見ると、この文では、with her dog に始まる修飾語句(前置詞句: 「彼女の犬と一緒に」の意を表し、動詞 come を修飾しているので→副詞句)に含まれる her dog が話題の中心になって展開されているように感じられます。文が長くなる大きな理由の1つが修飾語の在り無しに関係があります。関係詞節による修飾表現には、先行詞 (被修飾語 = 修飾される語・句) を制限的に或は限定的に修飾する場合と、先行詞に補足情報を付加する非制限用法或は継続用法とがありますが、いずれにしましても文が複雑化するのは、これら修飾語によって多くの情報量が増えているからということになるでしょう。日本語のように情報量が増えても、修飾語は必ず被修飾語の前にしか置けないのに対して、英語では後置修飾表現が可能ですので、日本語で腑に落ちる形で理解するには、それ相応の法則 (英文法) を正しく理解していることが求められるものです。上の文では、with her dog の後に続いて関係代名詞の that が来ており、関係詞節 (that 節以下) は直接 her dog に掛かりますので、関係代名詞の制限用法 (限定用法) ということになります。また、この制限用法は先行詞を特定する意味合いを持ちますので、Vivian は他の犬を飼っている可能性を表していることにもなります。それだからこそ、この文では制限用法 (限定用法) で特定しておかなくてはならない、という解釈が成立つのです。

 

英文読解で手こずるパターンとは

 

それでは、以下の文になったらどうでしょうか。
Vivian is coming to my house tonight with her dog, Koro, that helped the police catch the criminal and appeared in the news on TV 3 days ago.
この文は、カンマ + 関係代名詞の文で、先の文に Koro が加わっています。つまり、この文では、彼女の犬の名前が特定されています。特定される先行詞は、関係代名詞を使う際には、もう既に特定されている先行詞を制限用法 (限定用法) で特定する必要はありませんので、この場合の解釈は条文とはニュアンスが少し異なる事になります。訳としては、「今夜ヴィヴィアンが彼女のコロと一緒に家に来るんだけど、そのコロは3日前に警察の犯人逮捕を助けてテレビのニュースに出てたのよ。」と解する事が出来ます。所謂、カンマ + 関係代名詞の使用では、もう既に特定されてある先行詞のコロには、制限 (限定) する必要がないので、ここでは that 節以下の関係詞節は、コロに対する補足情報を追加しているに過ぎないという理解が成立ちます。

 

いずれにしましても、先行詞を修飾するという点で、関係詞節 (人はものを先行詞とする場合は関係代名詞、時・場所・理由を先行詞とする場合は関係副詞) は形容詞節ということになりま。
制限用法 (限定用法) と非制限用法 (継続用法) の読解においては、訳し上げと訳し下げの2通りの方法がありますが、日本語の理解として間違っていなければ、過度に違いを殊更に強調する必要は無いと思われますが、後置修飾が可能になる英語ではこのような使用に当たってのルールとニュアンスの違いがあることは認識して置くべき事柄です。日本語を母語とする私たちは、必ず修飾語が前に来てその後に被修飾語が来る形で思考していますので、関係代名詞のような後置修飾をする英文表現を理解するには、慣れないうちは、意識的にこれら表現を立体的構造に復元しながらの作業が必要になります。この違いは、ひとえに日本語と英語の文法の違いから来るものと言えるでしょう。

英文読解の基本原則と英文法の運用

修飾要素は只単に文に付け加えられているものもありますが、修飾表現のなかに基本5文型に相当する表現が入り込んでいたりもします。英文読解の基本は、何が主語で、何が述語動詞であるかを先ずは特定することが大原則で、同時に、他の基本要素(補語・目的語)は何かを探しながら、修飾語はどこから始まり・その形はどのようになっているのかを見極めなくてはなりません。この文では、英語の基本5文型では基本要素には当て嵌まらない前置詞withから始まる修飾語に関係代名詞がついて、修飾語句(この場合は、関係詞節 = 形容詞節)の中に主語と動詞が入り込むことで、厳密には修飾要素に更に修飾要素が加わる表現で、her dogの Koro が話題の中心になっているように感じられるわけです。

 

1つの英文を理解するのにも、場合によっては更に多岐に亘る文法知識が必要になることもあるでしょう。長文読解となると、節と節との結びつける接続詞(等位接続詞・従属接続詞)の働き、各文を単独で理解する際の文法知識と他の文とを繋ぎ合わせる接続副詞などを理解した上に、既出の文の言換え表現等も読み解き、点と点を結んで面であるかのように繋ぎ合わせることが求められます。これらから、英文読解・長文読解とは、総合的な英文法知識の運用(英文読解・長文読解とは英文法の運用を参照)とも言えるかも知れません。