英文読解・長文読解とは英文法の運用

先に、英文読解・長文読解とは、総合的な英文法知識の運用であると述べました。英語の語彙・語法も含み、英文法書は各単元毎に編集されて、様々な文法用語がありますので、数多くの文法用語を日本語で覚えること自体に疲れ切ってしまうかも知れません。何事も一気には達成できませんので、ある1つの英文例集を読解する際には、そこで出会う新しい語彙・構文・文法事項について、その都度、自身の頭のなか・心のなかにしっかりと落とし込んでいく地道な作業を続け、所謂、「腑に落ちる」という段階にまで理解して、次に同じような場面(問題文)に出会う際には、必要に応じていつでも直ぐにその知識を応用出来るという準備を常に意識しておくのが良いでしょう。

 

これから、英読解を行なっていく過程で、英文章の中で「うーん、何だこれは?どこかで習ったような構文だけれども・・」というような時があるかも知れません。それは、ある意味、致し方のないことでもあります。何故なら、日本語を母語とする私たち日本人の殆どは、普段の日常生活では先ず使う事がない英語を、日本語環境下で学習しているわけですので、一度や二度学習しただけの事柄は忘れてしまうものです。だからこそ、意識的に英文法を学び、先ずは知識として獲得し、実際に多くの英文に触れながら、その知識の運用を繰り返すことが必要になるのでしょう。

たった1語でもその運用で意味が全く異なる

たった1語の単語でもその運用で全く意味が異なることがあります。

 

例えば、下記2つの文には副詞の just が使われていますが、2文の意味は全くと言って良い位解釈が異なります。
1) I just don't like my boss.  2) I don't just like my boss.
ある場面の1文だけを切り取った単文の形ですので、前後の脈略がはっきりしませんが、1) は「(私は)ボスのことが本当に嫌なんだ。」、2) は「(私は)ボスのことが好きなんてものじゃないんだ。」の意味になります。副詞として使われ るjust 1語で文意は全く異なります。
1) の場合は、I just don't like my boss. He is very mean.. 「ボスが本当に嫌なんだ。彼はとても維持が悪いんだ。」
2) の場合は、I don't just like my boss. I will obey to whatever he says. 「ボスのことが好きなんてものじゃないんだ。彼の言うことには何でも従うよ。」
のような使われ方になります。

当面の英文読解は母語である日本語との格闘である

このように日本語環境下で、日本語を母語とする私たち日本人の殆どは英語を勉強するわけですので(第2言語或は第2外国語を学ぶ環境にEFL環境ESL環境という区分があります)、英語学習を開始してから当面の間、英文読解は日本語で獲得した英文法の知識を駆使して英文内容を解いていくことになり、そこには無意識的に必ず日本語の介在と言いますか、日本語による思考が介在することになります。勿論、理想論としてよく言われるような所謂直読直解が出来れば、それが一番良いのですが、直読直解が可能になるのは、ある一定レベル(レベルの定義は実際には難しいですが)の読解力がついてからになります

 

難しかった英文和訳の試験問題を後から振り返って、「試験の最中には、これまでに培って来た英文法の知識を総動員しながら、知力をつくして前後脈略を考慮して頭を捻って答えをだしたのだけれども、よくよく考えて見たら、あの時、試験中に闘っていた相手は決して単に英語だけではなく、実際には母語である日本語と闘っていたんだ」、とふと気付いた経験があるのではないでしょうか。つまり、当面の英文読解に於いては、英語と日本語との間での厳しい知力の闘いのなかで、英文法の運用力が磨かれ、英語力の基盤というものが構築されていくものなのです。

 

当面は、英文読解は、正しい英文法の知識を運用しながら、日本語の意識下でなされますが、英文の構造・構文に慣れて来るに従い、徐々に読みながらそのまま理解する直読直解へ繋がっていくものと考えます。この段階で、英語力の基盤はしっかりと形成されつつありますので、ある程度(レベルの定義はやはり難しいものですが)のレベルの英文はそのまま理解していくのが可能になると思われます。しかしながら、これは日本語でも同じことですが、自身の経験の無い事・内容で、論理的思考能力を必要としたり、文が複雑になってくる際には理解する為の時間が必要となります。英文読解に於いても同じで、深い思考は、やはり一旦日本語の意識下で処理されてから理解されることになるでしょう。しかし、話題となっている事柄の背景知識などが分かってくるにつれて、英語のままでの理解、つまり、最終的に直読直解という流れに繋がっていくでしょう。